2014年9月5日金曜日

神奈川警備隊司令官の回想

奥平俊蔵著/栗原宏編『不器用な自画像』(柏書房、1983年)

騒擾の原因は不逞日本人にあるは勿論にして彼等は自ら悪事を為し之を朝鮮人に転嫁し事毎に朝鮮人だと謂ふ。
適々市の郊外に朝鮮人多かりしを以て朝鮮人暴動の噂を生み迅速に東京其他の各地に伝播せるものにして、朝鮮人襲来と称し人心に大恐慌を来せる発起点は横浜なるものの如し。
横浜に於ても朝鮮人が強盗強姦を為し井戸に毒を投込み、放火其他各種の悪事を為せしを耳にせるを以て、其筋の命もあり、旁々之を徹底的に調査せしに悉く事実無根に帰着せり。
注)読みやすさを考慮して改行を追加しています。


解説◎
横浜での騒擾について、関東大震災時に神奈川警備隊を指揮した奥平俊蔵中将が書き残した内容。『不器用な自画像』は、1926年(大正15年)から1940年にかけて、家族のために書き残していた自叙伝を編集したものである。奥平は1875年(明治8年)生まれ。1924年に中将で退役。その後も「軍事思想の普及、国体明徴運動、国民士気の作興」に尽力したという(同書解題)。